曲木チェアとカフェ・ノルマーレが演出するトーネットの世界 1
曲木チェア、「まげきチェア」と読み、決して「きょくもく」とは読みません。
椅子の加工方法が木を曲げて作るため「曲木」と読ばれているのです。
その歴史は古く、北アメリカ先住民が起源とされたり、日本でも曲木細工として平安時代までさかのぼったり、中国に紀元前から存在していたなど諸説ありますが、19世紀半ばにドイツ人ミヒャエル・トーネットが「この技術を使って量産に成功させた」が起源とされるのが一般的でしょう。
ミヒャエル・トーネットってどんな人
上画像は、曲木チェアの生みの親、ミヒャエル・トーネットです。
推定年齢はわかりませんが、相当偉くなってからではないかと思います。
トーネットについて諸説ありますが、僕がポーランド人やチェコ人から聞いた話を僕なりに解釈してお伝えいたします。
まずトーネット氏は、なめし革職人を父にドイツ・ボッパルトで1796年7月2日に生まれたドイツ人です。(WIKI引用)
1789年がフランス革命と考えれば、かなり古いところまでさかのぼります。
時は、オーストリア帝国(1804年成立)君主は名門ハプスブルグ家です。
若きトーネット氏は、ハプスブルグ家の家具職人として就職したのです。
当時の家具、主にチェアですが全て一本一本手作りです。
思いっきり時間と手間がかかるのです。
君主様の中間管理職(上司)から、「徹夜してでも早く作れ!」と、君主様だけに仕方ありません。
「このままでは死んでしまう」と必死に「なにかいい方法はないか」と考えたところ、チェアをパーツに分けて大量に生産し組立てる方法を見出したのです。
これにより、生産効率があがり一定の数量が早く出来るようになりました。
トーネット氏は、ただの職人ではありません。
この方法を用いて一般市場にも普及できないかと「ハプスブルグ家」家具部門を退職し、起業したのです。
そして、更に「パーツを量産できないか」と木を蒸して曲げた後に成型する方法を発明し、チェアの生産能力を格段にあげたのです。
トーネット氏のチェアは、納期も早く大量に出来たため、ウイーンのカフェを中心に瞬く間に普及していきました。
ただ、弱点がありました。
施設にお金がかかり、更に広大な土地と人件費がかかるのです。
トーネット氏は、終りません。
ドイツ郊外、ポーランド、チェコ、ハンガリー、ルーマニア、イタリア、クロアチアなど
土地が安く人件費も安い地域に次々に工場を作っていったのです。
そしてトーネット氏のチェアは「ベント」曲げる「ウッド」木「チェア」椅子、「ベントウッドチェア」曲木椅子として全ヨーロッパ、アメリカに輸出され巨大企業となっていったのです。
こうしてみるとトーネット氏は、デザイナーというより企業家のように感じます。
その後、一般的なチェアの大量生産が常識化され曲木チェアは、それ程売れなくなってしまいました。
そして、旧共産圏諸国に作られたトーネット曲木工場は、第2次大戦後に各国の国営工場として生産を続けていましたが、自由化とともに民営化されていきました。
今でも残っている工場では、トーネットの曲木チェアを当時の機械のまま生産しています。
つまり、レプリカではなくまさにトーネットのチェアそのものなのです。
ここで余談をひとつ。
画像は、25年前にNOCE大月物流センターに輸入されたトーネットチェアの荷姿です。
紙に緩衝材を入れ紐でグルグルと巻いて出荷されるのです。
この方がカートンに入れるより輸送効率がいいわけです。
どこか日本のコラムでトーネット氏がノックダウン方式を考案したとありますが、基本はこのような形で出荷されるため少し違っています。
これを考案したのは日本人です。
日本は、ヨーロッパから距離があるため輸送コストがかかってしまいます。
コンテナ輸送が基本のため載る量も限りがあるのです。
日本でトーネットチェアを広めたのは、今は無くなってしまったアイデック社です。
アイデック社は、輸送コストを削減するため部材で輸入したのです。
それにより完成品の倍近くコンテナに積むことが出来ました。
ただ問題があり、伝統的な曲木チェアは一本一本調整しながら組み立てるため「一度組み立てた後パーツにばらす」事になり、本体のコストカットには大きく繋がりませんでした。
カフェ・ノルマーレはポーランド製のトーネット、ここがすごい
下北沢にあるパンを粉から作るパニーニのカフェ・ノルマーレのチェアは、トーネット氏のポーランド工場で作られたものを使用しています。
(テーブル上のQRコードを読み取っていただければサイトに飛びますので、そのままご購入いただけます。あと、テーブルは一部ポーランド製ですが、他は違います。大きなカウンターテーブルは、僕が木を切って製作しました。けっこう雑ですがトーネットに敬意を表してチェアを引き立たせるため「魂」入れて作りました。)
カフェ・ノルマーレのトーネットチェアは、ポーランドにあるトーネット氏の工場で機械も当時のまま、職人が当時と全く同じ方法で作っているのです。
まさに200年の悠久の鼓動が今も鳴り続けているのです。
カフェ・ノルマーレで出会えるトーネットの椅子たち
カフェ・ノルマーレにあるトーネットチェアを御紹介していきます。
まず、NO4。
背もたれの美しさは、まさに芸術品といえるでしょう。
曲木が作る官能の世界です。
大きめのシートには、ブナ天然木の木目がきれいに表現されています。
シートを支える「ヌキ」にあたる部分は
1本の曲木で作られています。
背もたれの飾り部分が、背中にフィットし抜群の座り心地を与えてくれます。
続いてNO16です。
このナンバーは、トーネット氏が採番したもので200年前と変わりません。
背もたれは、NO4よりもスッキリし、少しファニーなイメージとなっています。
脚の「ヌキ」は、NO4と同じ仕様になっています。
座面の木目は一本一本全て違っています。
揃えると単品よりも重厚なイメージになります。
座り心地も抜群です。
サイズは、上画像のようになっています。
カラーは、それぞれウォルナット
オイル仕上げの2色となっています。
価格は、税込、残材処理、送料無料でNO4がウォルナット48,000円、オイルが49,800円、A16が、ウォルナット34,800円、オイルが39,800円となっています。
世界中のカフェで愛され続けているカフェチェアの代表でもあるトーネットチェア、今でも200年前と変わらない製法で生き続けています。
その鼓動を是非。カフェ・ノルマーレでお試しいたただければと思います。
こちらがカフェ・ノルマーレで提供しているパニーニです。
店内で粉から作り上げたパンをパニーニにしています。
僕が、イタリアのよく行っていた頃、ランチに食べていた味を忠実に再現しています。
フィリングもイタリア産パルマハムを原木からオーダーごとにスライスし、イタリア産モッツァレラチーズとあわせてグリラーで焼き上げます。
外のパリパリの香ばしさととろけるチーズは絶品で格別です。
1種セット900円税込(このテーブルが僕の作品で、杉の無垢材を使用しています。)
2種セット1,200円税込となっています。
フードも一切手抜き無しの本物です。
是非、トーネットの世界とあわせて素敵な時間をカフェ・ノルマーレでお過ごしいただければと思います。
◆チェアA4【送料無料】
※価格はブログ更新時のものです。